保育園と親子のサードプレイス【くらき永田保育園】

保育園が公共施設として「街のサードスペース」として機能することは出来ないのだろうか?

くらき永田保育園 鈴木八郎

保育園の課題を社会で解決する

2001年「子育て、街育て」を旗印にくらき永田保育園を立ち上げ20年が経過しました。私は保育所だけでなく、乳児院や母子生活支援施設といった社会的養護系の施設を運営していることもあってか、あらゆる子どもと家庭の問題や課題を「施設の中だけで解決するのではなく、社会の中で解決しなければならない」という考えを持って保育所運営をしています。ここ数年では「保育士の悩みをITの力で解決しよう」というアイデアソンや「保育士とコラボして新たな玩具を開発しよう」というハッカソンを開催したり、また、食材を搬入してくれる農家さんや街の絵本屋さんが玄関ホールでマルシェを行ったりといった活動も保育園では日常的な風景となってきています。

アイデアソン 保育の悩みを解決
手づくりおもちゃ ハッカソン

さらに写真家や様々な表現者たちが保育園をギャラリーとして活用し、作品を発信するなど保育園を活用して様々な人たちが活躍する「場」が育ってきています。今日も保育園にはさまざまな人たちが訪れてきます。

そんなこともあり「くらきのコミュニティは凄いですよね」と声をかけてもらうこともあり、開園当時の想いが実現しつつある嬉しさを感じると同時に、その言葉に違和感を持つ自分もいます。

サードスペースというイドコロ

コロナの感染症が起こり、人々の関係性が大きく変化している中、ストレスを感じながらも見知らぬ人たちのうねりと格闘しながら職場に通い、週末には正解のない家族との過ごし方に悩む家族も多くみられます。こんな時、保育園が自宅や学校、職場とは別の居心地のいい居場所になれないのだろうか。都市社会学者レイ・オルデンバーグが説いた「第三の場所」を意味するサードプレイス、それも親子のサードプレイスとして機能しないだろうかと強く感じています。

生活のために行かなくてはならない場所でもなく、また、「いる」ために「する」を強いられる義務感を感じるようなコミュニティでもない……そんなイドコロ。

「ぼ~燃会」というサードスペース

ここ10年くらいでしょうか12月の冬至の夕方、園庭で “ぼ~っと焚火を燃やしているだけの「ぼ~燃会」なるものが行われます。園児や職員だけでなく、地域の人や保育園のステークホルダーの皆さんも集まり火を囲みます。誰が言い始めたわけでもなく食材が運び込まれ、飲み食いが始まり、とりとめのない会話があちらこちらで行われています。ただ『いる』だけの幸せ。このようなどんな人も受け入れるノーターゲッティング、ノーマーケティングな親子のサードプレイスを作ることはできないだろうかと夢見ながら小さな実践を続けていきたいと思います。

親子のサードプレイス「ぼ~燃会」

鈴木八朗(くらき はちろう)

(福)久良岐母子福祉会常務理事。社会福祉士。 東洋大学、社会事業大学を経て、母子生活支援施設くらきの指導員となる。虐待やDVといった社会的養護に関わる、その後、待機児童対策としてくらき永田保育園の新設にかかわり現在に至る。趣味のアウトドアを活かし、「こども環境管理士」として、子どもの環境教育や自然体験の普及に努めている。

くらき永田保育園 園庭