特集 学校は、小さなマチ。マチは、大きな学校。

早来町役場 三上 泰明

わけない学校/みんなの学校/子どもにやさしいまちづくり(CFCI)

ここは、新しい世界と出会える学校 ~安平町立早来学園

当町のCFCI(子どものにやさしいまちづくり)イメージ・シンボル写真

ピンチをチャンスに!新しい世界と出会える学校

2018年9月6日3時7分、北海道胆振東部地震が発生しました。「ブラックアウト」という言葉が流行した震災です。
北海道安平(あびら)町の早来(はやきた)地区にある中学校が被災し、校舎が使えなくなりました。
年が明け、どのように新しい学校へ復興を果たすのか、地域の大人のみならず、子どもたちとともに「新しい学校を考える会」として議論を開始。「ピンチをチャンスに!」という町長のスローガンのもと、安平町が大切にしてきた「学校は小さなマチ、マチは大きな学校」をキーワードに「地域の方も利用できる学校」という方向性が固まっていきました。
そして、学校づくりのコンセプトを「自分が“世界”と出会う場所」としました。globalやworldだけでない世界、つまり自分の内面・価値観を広げることができる人や文化など、地域にある“本物”と出会うことができる学校づくりを目指すことになりました。

わけない学校・みんなの学校

そんな学校づくりで大切にしたのが、これらの考え方です。
地域にある3つの小学校も老朽化が課題であり、最終的には小中一貫校として、施設一体型の義務教育学校をつくることになりました。ですので、小学校と中学校の9年間を『わけない』ということがあります。

そして、地域の方も利用できる学校を目指すことから、地域と学校を『わけない』、これはつまり、地域の方にとっても、学校にとっても、誰かのものでない『みんなの』学校であるという想いがあります。
それを具体化したのが、校舎内にある地域開放区域「まなびお」です。学校の一部を地域の方々とシェアすることで、子どもも大人も学ぶことができる「まなび(学び)を、導く(ナビする)場所」として、いつでも利用できるようにしています。下記の写真は、「アビラトークス」というプレゼンの場で、地域のチアダンスクラブの中学生が地域の方へプレゼンしている様子です。この「まなびお」は、学校図書室と地域の図書室機能も合わせ持ち、司書や地域の活動をサポートする「コンシェルジュ」を置いています。

「アビラトークス」というプレゼンの場で、地域のチアダンスクラブの中学生が地域の方へプレゼンしている様子

子どもにやさしいまちづくり(CFCI)

安平町では、日本ユニセフ協会から日本で初めての「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)実践自治体」として承認されています。これはつまり、「子どもの権利条約」の実現であり、その中でも安平町では「子どもの社会参画」を最も意識して取り組んできました。「新しい学校を考える会」による学校づくりの取り組みは、まさにこれを象徴するものです。
また、早来学園では「校則改定委員会」や「ルールメイキングプロジェクト」といった「先生と子どもたちが対等に議論する場」、「地域の方に考え方を伝え意見を聞く場」が次々と生まれています。
「子どもから意見を聞く」「子どもと大人は対等」
これらが安平町の理念として浸透してきているからこそ、地域と学校がともに、子どもと大人がともに、同じ方向を歩んでいくことができるのです。地域とともに歩む学校を目指して、その第一歩を踏み出しました。

 

三上 泰明(みかみ やすあき)

安平町出身。2003年4月早来町役場奉職。教育委員会事務局学校教育グループで、町の最優先課題「子育て・教育」分野の子育てに関する事業全般を担当し、早来学園に係る広報や、学校と地域との協働に関する業務にも従事。