子ども中心/体験学習/地域
「まおい学びのさと小学校」の学び
開校までの道筋
「まおい学びのさと小学校」は、北海道長沼町に2023年4月に開校した体験学習を軸とする学校です。ドキュメンタリー映画「夢みる小学校」で取り上げられた「きのくに子どもの村学園」のような体験学習を軸とした学校は、これまで関東、東北、北海道地方にはありませんでした。そこで、故・鈴木秀一北大名誉教授を中心に1980年代半ばに始まった研究会・教育活動が母体となってつくってきた学校です。
開校までの道筋では、地域の方とともに歩んできたものといえます。特に、鈴木氏が亡くなった後、私が一念発起して再び小学校づくりの呼びかけ人になり活動する中で、北長沼の地域の人たちが学校づくりの仲間となってくれました。
長沼町役場からは、2019年で閉校になる北長沼小学校校舎の無償貸与の約束をいただきました。学校法人認可のための基礎資金集めも本当にいろいろな方々のご支援で何とか積み上がり、北海道庁への申請・認可も3度目の正直でクリアできました。
地域あってこその学び
「まおい学びのさと小学校」は、子ども達の知的好奇心をとことん信頼し、教科横断的な学習形態「プロジェクト」での体験的な学びが軸であり、実際に時間割の約半分の時間を当てています。
例えば、衣食住に関わる学びが豊かになるようなテーマ「料理」「ものづくり」「演劇」を設定し、1年の始まりに子ども達が自らの所属を選択して学年縦割りで探求していきます。「料理」というテーマでは、長沼名産の大豆を栽培し、豆腐づくりに取り組むなかで、地元のお店に教えを請いに行ったり、また、鶏を飼うために鶏小屋の作り方や鶏の飼い方について地元農家からアドバイスをいただいたりしました。
このように、地域に飛び出し体験することでホンモノに出会うことを大事にしています。学校のきまりも全校児童で話し合ってきめます。大人・スタッフ達は「先生」ではなく、子ども達の「やりたい」「知りたい」を受け止めて地域の「ホンモノ」につなぐコーディネーター・支援者なのです。長沼町は、畑作・米作・酪農など農業中心の町で、オシャレなレストラン・カフェやジンギスカン店、温泉宿、スキー場などがあり、陶芸家、アイヌの伝統楽器づくりなど、多様な専門家が暮らす地域であり、子どもたちの学びを引き出す「ホンモノ」がたくさんあるのです。
地域と共に生きる学校
学校づくりの時に立ち上げた「NPOまおい学びのさと」が、学校法人設立後も学校と地域を結び、学校をめぐる活動を継続しています。
学校スタッフに、地域の方々、継続的な支援者、開校後は保護者達も加わり、子ども達の体験受入れや地域の交流活動などに尽力しています。
学校に給食がないので、NPOのごはんチームが週2回、地元食材を生かしたごはんと汁物の昼食提供をしてくれています。本当に地域あっての学び、学校であり、かつ地域も子ども達の声に元気をもらい、ともに歩んでいく仲間だと実感しています。
細田 孝哉(ほそだ たかや)
教育学部を卒業後、札幌市立中学校、高等学校、特別支援学校で社会科教員として37年間勤務。その間、新しい教育・学校をめざす研究会、のち認定NPO北海道自由が丘学園・ともに人間教育をすすめる会理事として活動。写真は、きのくに子どもの村学園長堀真一郎さん(左)と本校で「まおいごはん」を。