【書評】子どものための居場所論

この本を知ったのは、著者の阿比留さんが私の著書『子どもとあそび』よりこどものあそび空間についての分類とその変化についてのデータを引用したいと問い合わせしてきたからである。

その後、出版された本を求めたところ、日本子どもを守る会の月刊誌に2017年4月から2019年3月まで年間連載された「子どもの文化を生み出す「居場所」」をまとめたものだとあとがきに記されていた。

著者は、早稲田大学文化構想学部准教授で社会養育と社会福祉を専門としている。

この本は「子どもの居場所」という点を教育的にも、また生活という点でも様々な事例を紹介しながら、こどもたちが選択しながら居場所を確保していくことの重要性を論述している。特に第1部第2章の「居場所の変遷」、第3部「「居たい」と「戻られる」のはざまで」はとても説得力がある。また、その中で、成長に伴う居場所の移り変わりはとても興味深い。現代のこども達の居場所の変遷を示していて、おもしろい。

私自身、建築家として現代の学校という空間に、こどもの居場所をつくれるのか、という問題意識をもっていて、そういう視点からもこの本はとても示唆と気づきに満ちている。

こどもの居場所を掘り下げている若手の研究者の著書として高く評価したい。

(東京工業大学名誉教授 仙田満)

書名:子どものための居場所論 異なることが豊かさになる
著者名:阿比留久美
発売日:2022年05月
価格:定価:2,200円(税込み)
ISBN:978-4-7803-1218-8
判型:四六判
ページ数:240ページ
リンクURL http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ka/1218.html