オペア留学からみるアメリカの子どもの放課後事情

福井大学国際地域学部3年 大西美紀

みなさんオペア[1]というお仕事を知っていますか?アメリカなど様々な国で1年か2年の期間をホストファミリーのお家で、ホストキッズのお世話をしながらホームステイをして過ごすというプログラムです。私は去年1年間をオペア留学生としてアメリカで過ごしました。 オペアという経験を通して知ったアメリカの子どもの放課後の活動に関するリアルな日常生活についてご紹介したいと思います 。

オペアとしての毎日

私のホストファミリーは、お父さんが日系アメリカ人 、お母さんがイタリア系アメリカ人です。日本に関係がある、もしくは子どもに日本語を学ばせたい、日本の文化に触れさせたいという家庭が、日本人のオペアをよく利用しています。また、両親共働きで、お迎えに行くのが難しい家庭も多く、子育てのお手伝いとしてオペアの制度を利用する家庭も多いです。私のホストキッズ(以下キッズ)は10歳(小学5年生)と13歳(中学1年生)の野球が大好きな元気盛りの男の子たちでした!アメリカでは、子ども(小学生は特に)一人で外へ出歩かせると法律違反になるため、必ず送り迎えが必要になります。朝は2人を車に乗せて学校まで送ります。放課後のお迎えまでは私の自由時間です。大学のオンライン授業を受けたり、友人と出かけたりしていました。午後3時になるとまず下の子のお迎えに行きます。習い事がある日は一回帰ってすぐ準備をして練習に向かいますが、何もない日は放課後に広い校庭で友人達と遊ぶのをママ友さん達とお喋りをしながら見守っていました。学校の先生達や他の親御さんはとてもフレンドリーで、顔見知りになる時間があるのもお迎えという文化があってこそです。私はその時間が大好きで、よくそのままママ友さん達とお互いに子どもを預けあったり、私がキッズの友達を図書館に連れて行ったりもしました。

 

アメリカの小学生の教育事情

アメリカの小学校の授業の様子はとても面白いです。例えば 、ガーデニングという授業では、専門の先生がいて、校庭の庭にある庭園ですべての植物を生徒が育てています。キッズが自分で育てたローズマリーを持って帰ってきたこともあります。

学校以外にも習い事はとても多く、野球、ゴルフ、日本語、チェロやバイオリンのレッスンとほぼ毎日習い事に通います。キッズたちは本当に時間がなく、放課後は友達と遊びたいと言うのを引っ張って家に連れて帰り、2回目の昼ごはんのようなおやつを食べさせ、練習に連れて行きました。

キッズと帰宅すると宿題の時間です。上の子は中学生なので自分でできますが、下の子は言わないとなかなかできません。特に関係が作れていなかった最初の頃は、全く宿題をやってくれず、私は自分を責め、辛かったこともありました。キッズがかんしゃくを起こすとお世話するのが大変でしたが、家に帰ったらすぐ宿題に取り掛かるというルーティーンを定着させてからは少し楽になりました。また、宿題は、google classroomで提出したり、動画やパワーポイントを作ったりとインターネットを使った教育が充実していました。コロナ禍で、約1年半の間、リモート授業をしていたことも影響していると思います。宿題が終わる前に両親のどちらかが家に帰ってきて、面倒を見てくれることもあり、その場合は、私が夜ご飯の担当になり、日本食を振る舞いました。

キッズの文化・地域交流体験

ホストファザーが日系アメリカ人だということもあり、キッズたちが幼い頃は日本語幼稚園に通っていましたが、小学校からは全て英語の公立学校に通っています。それでも彼らが日本語の能力を維持できるのは、キッズたちのために、幼い頃から私のような日本人のオペアを毎年迎えていたためです。幼い頃から日本語のある環境で生活し、私もキッズには日本語だけで話し掛けていました。キッズたちは、両親とは英語で話し、私とは日本語で話し、今でも毎週月曜日にオンラインで日本語の先生のクラスを受けています。

オペアとしての生活の中で私が気に入っていたのは地域との交流の場が多いこと、自然のなかで遊ぶ場所が多い点です。学校のそばには公園が併設されていて、毎週日曜日には道路を歩行者天国にし、地域の農家さんが開くファーマーズマーケットもありました。街の人がよく集まってくるので、友達に会うことも多かったです。またホストファミリーの家のすぐ裏に山道コースがあり、よくマウンテンバイクに乗ったりハイキングをしました。 子どもにとって 自然が多く、地域との交流が盛んなことは コミュニティ全体で子育てをするという視点で見るととても重要なことだと思います 。

オペア留学を通して感じたこと

私は大学の交換留学を希望していましたが、コロナ禍で大学からの派遣が叶わなくなり、休学してオペア留学をすることを選びました 。ホストファミリーと過ごした1年間は、数々のアメリカならではのイベントに家族の一員として参加するという貴重な時間となりました。交換留学では得られなかった、アメリカ人の家庭生活・家族との時間、子育て環境など、アメリカの文化を肌で感じ、学ぶ機会を得ることができたことは、オペアならではの醍醐味だったと思います。

今回は、オペア留学生として体験したアメリカの放課後事情について紹介しました。現代の日本の子どもたちのように習い事が多く、友達と遊ぶ時間もあまり取れないキッズたちの実情をつかむことができました。一方で、忙しいキッズたちには、地域コミュニティや習い事を通した学外の友達との繋がりもあり、私のような外国人オペアとのコミュニケーションもあります。忙しいと思う事もありましたが、充実した放課後時間をホストキッズと過ごした日々は、私の学生生活の宝物です。

 

[1] オペアとは、具体的には米国の家庭に12ヶ月滞在し、その家庭の子どもをケアしながら、家族の一員としての家庭生活、地域生活を体験するプログラムです。
引用:『新しい成人留学プログラムの考察―オペアプログラム―』横道千秋,1997
https://cir.nii.ac.jp/crid/1542543045162244608

大西美紀(おおにし みき)

徳島県出身。父の転勤で中学生の頃から福井に住む。現在福井大学国際地域学部3年。国際関係論や子ども環境学、言語学、地域活性について幅広く学ぶ。1年間アメリカでのオペア留学を経験した。