特集 地域の中に思春期の子ども達の居場所を チャレンジクラブの取組

NPO京都親子支援センター・チャレンジクラブ事務局長 森賢悟

子ども達に豊かな放課後を…そんな親たちの思いで誕生したチャレンジクラブ。京都府内で一番小さな町で30年以上続く「親子共遊び・共育ち」の実践です。地域の中でいきいきと活動する子どもと親とスタッフの姿は小さな町の自治的気風にも影響を与えています。

チャレンジクラブとは

チャレンジクラブは高学年(5、6年生)から中高生が活動している地域クラブで、京都府大山崎町にあります。公設公営の学童保育が4年生までで終わってしまうことから高学年にも豊かな放課後をという親たちの思いで1991年に発足し、保護者会運営で30年以上に渡り活動を継続しています。
チャレンジクラブの活動は“日常活動”と“行事”です。日常的には外遊びや室内遊び、お菓子作りなどもします。また夏には近くの川で泳いだり飛び込みをしたり、冬には裏山でチャンバラや基地作りをしたりと自然の中で遊ぶ機会も豊富です。中学生は遊ぶ以外に日常的な学習会を開いています。大きなことに挑戦しようと様々な行事も子ども達と企画運営しています。キャンプはもちろん、夏山登山や18きっぷを使った旅行にも行きます。日常の活動と非日常の行事が両輪となりチャレンジクラブの活動を作っています。

評価の対象にならない場所

チャレンジクラブは子ども達の居場所の一つです。思春期の子ども達にとって地域の中に自分たちの居場所があるということはとても重要です。この時期の子ども達にとってその場所が居心地の良い、本当に安心できる居場所となるにはいくつかの条件が必要だと感じています。一つ目は子ども達の自治が認められているか。子ども達の自治とは自分たちで決めるということです。“やりたい”を決めるのはもちろんですが“やらない”を決められることも重要です。おとな達はついつい先回りをして多くを与えようとしてしまいますし、できたかできていないかを気にしてしまいます。しかし子ども達の居場所には数値化できる評価は不要ですし、「○○力をつける」といったおとな目線の目的も必要ありません。ありのままの子ども達がそのままで受け入れられる場所が必要です。
二つ目の条件は、おとなの目が届いている安心感だと思います。思春期の子ども達は反抗期を迎え、おとなと一定の距離を取ろうとするものです。しかし安心できる居場所にはおとなの目を必要としています。信頼できるおとなの目です。思春期の子どもの溜まり場と言われる居場所がいろいろあるでしょうが、やはり本当に子ども達が安心できる場所ではありません。チャレンジクラブは思春期の子ども達にとって安心できる溜まり場なのです。

保護者会運営~共有する私的空間~

チャレンジクラブがおとなの目が行き届いた居場所であるのは、保護者会運営だからです。自分の親や友達の親たちが協力して運営している場所であることを子ども達はわかっています。だからチャレンジクラブで過ごす自分たちの様子が親たちに知られてしまうことも理解しています。一見、思春期の子ども達が嫌がりそうなことではありますが結果的にはこのことが子ども達の安心に繋がっていると思います。自分の親から言われたらついつい反抗してしまうことでも友達の親から言われたら素直に聞くことができることもあるでしょう。もちろん親にとっても我が子以外の子どもとじっくり関わる経験は自分の子育てに向き合う良い機会にもなります。そういった子ども集団と親集団の緩やかな繋がりが大切なのだと思います。
子ども達はチャレンジクラブを心から安心できる大切な居場所にしたいと思っています。そのためには親もその場所を大切に思ってくれていること、自分の友達をよく知り好きでいてくれていることも重要です。子ども達に豊かな居場所を持ってほしいと思う親たちは子どもの居場所に対し、お任せするだけでなく積極的な関わりを持つことが大切です。だからチャレンジクラブは公的施設ではなく、親たちが知恵も時間もお金も出し合ってみんなで運営する“共有する私的空間”なのです。

森 賢悟(もり けんご)

NPO京都親子支援センター・チャレンジクラブ事務局長
都府乙訓郡大山崎町で子どもの居場所作りに従事して22年。