(特非)居場所研究室理事長 大谷直史
必要なことをどんどん組み合わせていくということ
放課後に子どもたちが群れて遊ぶ。そんな日常はゲームとスマホと習い事に取って代わられました。そうした中で、学童保育(放課後児童クラブ)は、子どもの放課後の自由で豊かな遊びを保障する重要な役割をもっていると思いませんか?日本では、現在140万人の児童が学童保育を利用し(厚生労働省調査)、小学校1年生に限れば半数近くが利用していることになります。
たまたま出会う関係からはじまる自由を生み出す場所
子ども食堂(日曜日以外毎日)のボランティアさんがおやつを作ってくれたり、同じ屋根の下に暮らしている住人が風呂から上がってきたり、不登校の中学生がマンガを読んでいたり、いつのまにかたき火を始めているおじさんがいたりと、不意に多種多様な人とのかかわりが生じます。たまたま同じ場所を利用している人々が協力せざるを得ない、必然的なかかわりを大切にしています。実は人間は、純粋な贈与をしたい動物なのではないかという仮説を持っていて、今それが家族によって閉じ込められていると考えています。なのでここに来れば自由に贈与ができる(してしまう)、そんな場所になればよいと思っています。自然との関係も同じで、そこにあった庭石や縁の下との出会いを待っています。
生活の場としての、新しい親密圏としての学童保育の可能性
学童保育は「生活の場」と呼ばれています。おやつや長期休みの昼食を手作りにすること、ニックネームでスタッフと子どもが呼び合うこと、保護者もボランティアとしてクラブで過ごすこと、中高生になっても試験勉強やアルバイトで関わり続けること等々、学校ではなく家庭でもない新しい親密圏(NFO)のカタチを模索中です。
学童保育は保護者を中心とする運動によって作られてきましたが、今なお制度的には不十分なところが多くあります。それゆえ、多様な形態を有する学童保育は、可能性が大きいとも言えるはずです。放課後子供教室や児童館、社会教育施設、市民活動団体や地域社会を含め、子どもの放課後を再構築したいと願っています。
引用:令和4年(2022年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(令和4年(2022年)5月1日現在), https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29856.html
大谷 直史(おおたに ただし)
(特非)居場所研究室理事長。
北海道大学で社会教育・環境教育を学び、現在鳥取大学准教授。子どもの貧困への関心から、現代の家族のあり方に問題を感じ、新しい親密圏を実践的に研究中。居場所の一室は1,227個のボードゲームが埋め尽くす。