書評 感覚の困りごとのへの心のケア ~センサリーフレンドリーをめざす実際

誰でも自己の「感覚」に困りごとをかかえて成長してきたのではないかと思われます。
評者自身、思春期頃から気圧の変化による頭痛をかかえていて、頭痛薬を飲んで部屋を真っ暗にして薬が効いてくるのを待っていましたが、スマホが気圧の変化でうまく働かないときは、「まぁ~スマホも頭痛かしら!」と冗談を言えるようにまでなってきております。

何をもって正常な「感覚」といえるのか一般の方々には不明な点が多々ありますが、本書では、音(聴覚)、光(視覚)、におい(嗅覚)、味覚、触覚、痛覚、温覚、湿覚、圧覚、前提覚の11の感覚の困りごととして、それらの原因はさまざまで、発達障害や精神疾患、身体疾患などの影響も考えられていると、指摘されています。

発達障害、特に自閉スペクトラムには感覚の問題が大きく関係していると指摘して、著書の中では、まず、「感覚の問題を知ること」として理論的背景を分かりやすく解説し、次いで、次の3つの視点から「感覚の問題」を支える支援の方策を具体的に示しています。①生物学的な視点に基づく感覚の問題への支援、②心理学的な視点に基づく感覚の問題への支援、③社会学的な視点に基づく感覚の問題への支援で、さらに、感覚の困りごとをかかえている方々の過ごす場面(乳幼児期、学校:小学校、学校:中高校、職場)ごとに事例から学べるように展開されています。

評者は教員養成系大学に所属していた関係で教育実習の連絡教員として、あるいは授業づくりの支援に伺った折に「困りごとをかかえた」お子さんの姿を多く見てきました。突然、教室を飛び出すお子さんやこだわりが強く教室のドアの開閉を何度も繰り返すなどのお子さんたちでしたが、先生をはじめ学校と保護者の方と連携が取れていると、すなわち「感覚への困りごとへの理解」が進んでいると、その対応はスムーズに行われていました。

3年ほど前に東日本大震災で津波の被害に遭われ統合された東北の某小学校を訪問した折、東北の木材を使用した「豊かな自然と地域の人々、そして学校にかかわる全ての人々の願いが凝縮された存在」の木造の校舎に出会いました。つくり方も校舎内に我が家のような温もりの「屋根のついた教室」があり、視覚、嗅覚、触感など児童の五感を刺激し続け、豊かな心を育むだろうな、と推察できる校舎と教室でした。が、廊下を隔てた前に「小さな隠れ家」を見つけた時、この小さな場スペースで外部の刺激がカームダウンできるだろうなぁ~と感心しました。感覚の問題は多様ですし、皆が一様に成長していくとは限りません。本書により、「感覚の困りごと」への理解や共感の第一歩となることを願っています。

(東京学芸大学名誉教授・こども環境学会顧問 小澤 紀美子)

 

書名  感覚の困りごとへの心のケア センサリーフレンドリーをめざす支援の実際
著者名 高橋 秀俊
発売日 2024年10月
価格 定価2,400円(税抜)
ISBN 978-4-753-31248-1
版型  四六判
ページ数 224ページ
出版社 岩崎学術出版社
リンクURL http://www.iwasaki-ap.co.jp/book/b653721.html