特集 非認知能力を育むつくばスタイル科学習

茨城県つくば市教育局学び推進課(兼)総合教育研究所・指導主事  大坪 聡子
茨城県つくば市立前野小学校・教諭  川島 祥平

前野小学校で取組む「つくばスタイル科学習」とは?

つくば市立前野小学校では、3~6年生の異学年学習を年間学習計画に位置づけている。つくばスタイル科(※1)の授業において、専門家や大学教授等、多様な他者との交流や協働を意識した探究学習を通して、児童の非認知能力(※2)を育むことを目指す。授業では、地域の豊かな自然を教材として、「①In-課題設定、②About-情報収集・比較分析、③For-表現・発信」のステップをもとに探究学習を進めている。

※1「つくばスタイル科」とは、「総合的な学習の時間」の目標を踏まえつつ、「つくば21世紀型能力」の育成を目標とする、つくば市独自の教科である。
※2 本授業における非認知能力とは、以下の3点を指す。
(1)他者とつながる力(コミュニケーション・協働)
(2)自分と向き合う力(自己理解・自己調整)
(3)自分を高める力(変革・創造革新・自己肯定)

「つくば21世紀型能力」とは、 以下の6種15の力を指す。

図1:つくば21世紀型能力について

2:つくば市が目指す探究学習

事例1:研究機関の専門家との連携し、持続可能な環境について考える(2023年度より実践)

学校のすぐそばを流れる谷田川に興味をもった子どもたちは、現地調査や水質調査、ゴミ拾いなどを行った。水質検査から谷田川の水質は良いと判明したが、現地調査では層が厚い泥が見つかり、そこからガスが出ているため部分的に水質が悪いのではないかと考え、研究者と共に探究している。研究者とは、共に現地調査に出かけたり、疑問点についてTeamsというデジタルチャットを活用してやりとりをして学びを深めている。現地調査から見出した問いを追究し、豊かな自然と共生するための生活の在り方を考える子どもたちの姿から、地域を大事に守っていきたいという温かい想いが伝わってきた。
図3:水質調査をする様子
図4:現地調査をする様子
図5:調べたことを共有する様子

事例2:筑波大学の教授・学生、つくば箒工房との連携による「箒づくり」(2022年度より実践)

あるグループは、前野地域の伝統文化に興味をもった。箒づくりの手法や特徴を学び、発信することでより多くの人に広めたいという思いが膨らみ、筑波大学やつくば箒工房と連携した学習へと展開していった。つくば式の箒製作を教わった子ども達は、「前野小学校に植えてあるコキアで箒を作れないか。」と考え、枯れた時期に刈り取ったコキアを利用してオリジナル箒を製作した。「どんな持ち手が良いかな。」「どれくらい乾燥させると良いかな。」等、子どもたち同士で考え、専門家にアドバイスをもらいながら、自分たちなりに最適解を導いていった。エネルギーの観点から箒の良さを捉え、その視点をデジタル資料にまとめ発信する子どもの表情は、とても生き生きしていた。持続可能な社会の実現に向け、環境にやさしい社会づくりについて考えを深めた実践である。

 

図6:箒作りを教わる様子
図7:箒を製作する様子
図8:持ち手を創意工夫する様子

デジタルと子ども環境 ~ICTの効果的な活用~

 子どもたち達の学びに実体験が大事ということは言うまでもない。しかし、体験から感じたことをより深く探究していく過程には、ICTが重要な役割を担う。授業を実践した川島祥平教諭は、「実体験を大事にしながら、ICTを効果的に活用することで、より多くの情報収集、オンラインによるインタビュー、研究者とのデジタルチャットのやりとり、写真や動画での記録、考えを発信する資料の協働作成、データのクラウド共有など、ICTなしでは実現できなかった深い学びを実現させている。このような充実した学びこそが、非認知能力の向上につながる。」とICT活用の有用性を感じたという。
学習後には、前野小学校の子どもたち達は、市内の谷田部南小学校の5・6年生とオンライン交流会を開催する予定である。「早く発表したい。そして、谷田部南小学校の友達の調べたことも聞いてみたい。」と、学校の壁を越えた学びを楽しみにしている様子だ。

図9:学校の魅力を発信する様子

図10:高齢者の方の暮らしについて質問する様子

大坪 聡子(おおつぼ さとこ)

茨城県つくば市教育局学び推進課(兼)総合教育研究所 指導主事

川島 祥平(かわしま しょうへい)

茨城県つくば市立前野小学校
教諭