本書は、大地保育6部作『名のない遊び』『どろんこ保育』『大地保育環境論』『コーナーのないコーナーの保育』『子どもと親が行きたくなる園』『子どもを伸ばす保育環境』の集大成である。研究と実践の理想を具現化した1冊といえよう。
はじめに、序章、第1章、第2章、第3章、第4章、おわりにで構成されている。
序章は、発刊に寄せて、日本の保育の重鎮である学習院大学教授 秋田喜代美先生、こども環境学会代表理事 仙田満先生、学校法人きのくに子どもの学園理事長 堀真一郎先生からのお言葉が掲載されている。
第1章は、野中保育園の変遷を論述しつつ、著者の自分自身が歩んできた人生、父母の足跡、祖父母の足跡、兄弟の足跡、まさに著者のファミリーヒストリーが書かれている。
第2章は、著者が実際に保護者に伝えたお便りとアメーバブログの掲載記事から抜粋が書かれている。ソーシャルワーカーとしての保育士の職務が実践的に論じられている。
第3章第4章は、著者の「大地保育」の真髄を、保育実践、人的・物的・空間的・自然環境の変遷、幼児理解を理論化し考察されている。特筆すべき点は、保育学のリサーチクエスチョンと方法論、成果について、理論や思想を含めて多角的にまとめられている。
本書の成果と意義について述べたい。
まず、本書全文、「大地保育」イメージ絵から著者の子どもに対する愛を感じることができる。子どもを理解することは、一人称人格そのものを認めることである。子どもの人格を尊重するということは、ありのままの一人称人格の表現を受容することが望まれることが述べられている点からである。
次に、実践事例に基づいた理論展開に、研究者だけでは抜け落ちてしまう、また、実践者だけでは抜けて落ちてしまう部分を補えることができる。つまり、本書は子どもの最善の利益を基本に、研究者だったり実践者だったりが様々な角度からアプローチを重ねる保育学研究にとっては、記念碑的な刊行であると言える。
また、保育士養成の教員である評者にとって、保育の本質を学生へ伝えるための橋渡しの書になると確信している。このような注目すべき書の刊行に至ったことを評者はとてもうれしく思う。
今後、数多くの保育に携わる方々への道しるべとなるものとしての広がりを見せることとして期待される。
(美作大学 薮田弘美)
書名 じゅっぺ先生の「輝け!大地保育」-日本から生まれた自然・遊び・自由・創造・愛の保育-
著者名 塩川 寿平
発売日 2024年8月
価格 定価3,000円(税抜)
版型 A5判
ページ数 263ページ
出版社 大地教育研究所
リンクURL https://ameblo.jp/juhei79/entry-12865685270.html