【書評】「こどものまち」で世界がかわるー日本中に広がるその可能性

 

本書は、ドイツ・ミュンヘン市からはじまった「こどものまち」の歴史・運動の背景やその理念、「こどものまち」の活動が日本全体に広がる過程やその現状、さらに「こどものまち」を経験してきた、子ども・若者たちの声、実践者・研究者の語りを通して、あらためてその意義と可能性を模索する内容となっている。現在「こどものまち」に関わる、また取り組んでいる実践者・研究者のみならず、これから「こどものまち」を始めたいと考えているユースワーカーにとっても必読の書である。
本書を通して、私自身がかつて「こどものまち」で関わりがあった子どもの成長した姿に出会うことができた。「こどものまち」には、関係する誰をも虜にしてしまう魅力がある。そこには、遊びを通して社会を思う存分に体験できるこのまちが、明らかに成長と将来につながることを、現代の都市に生きる子ども・若者たちに与えているという確信があるからだろう。
さらに、コロナ禍においても、「こどものまち」の可能性が追求され続けたことにも強い関心を抱かされた。現代では、子ども・若者をとりまく成育環境の課題が一層指摘される。さらに、コロナ禍は子どもも大人も社会の分断を経験せざるをえなかった。「こどものまち」には社会をつなぐ力があるのかもしれないと改めて実感した。以上のように本書は、教育・福祉・まちづくり等の多様な視点から、そして、子ども・若者の経験・成長、その権利を保障し、さらには社会をつなぐ実践としてあらためて見直される時期にきたと感じさせられる一冊であった。

(植草学園短期大学 田村光子)

 

書名  「こどものまち」で世界がかわるー日本中に広がるその可能性
著者名 番匠一雅・岩室晶子・花輪由樹・小田奈緒美
発売日 2024年3月
価格   定価2,200円(税抜)
ISBN   978-4-894-91410-7
版型  A5判
ページ数  240ページ
出版社   萌文社
リンクURL http://www.hobunsya.com/books/kodomo/