【B&C】ふつうの子ども

 

 9月公開。早速観たいという思いから、子連れで映画館へ。私が観た回では他にこどもらしき姿はなかったが、ぜひ、こどもも大人も一緒に観てほしい映画であった。

主人公は10歳の小学4年生の唯士、同じクラスで物怖じせず環境問題を訴える心愛、クラスの問題児の陽斗が、空き家を居場所にして、自分たちで考え、自分たちで行動しようとする。こどもたちは、表向きは「環境問題」に対する「活動」を行うのだが、その背景には、こどもたち一人ひとりが感じている大人への違和感や、いまのこどもが生きる「あいまいな日常」が描かれている。学校やテレビではSDGsを唱えるのに、こどもが大人や社会を批判すると、真剣に受けとめてくれない先生。子どもの思いに向き合おうとしない親の姿。監督や脚本家が描きたかった「ふつう」は、みんな同じという普遍的な「ふつう」というよりも、いまどきの一人ひとりのこどもたちのリアルな「ふつう」、あいまいな大人や社会、日常のなかで生きる「ふつう」なのではと感じた。

私は「こどものまち」という、こどもが自分でまちをつくり、まちを動かす活動に毎年関わっているが、毎年にわたり多くの子どもたちが継続的に参加してくる。自分たちで考え、自分たちで行動しようとする、そんな試行錯誤の経験ができる機会が、非常に少なくなっているのが実情だ。いつも悩むのが「こどもと大人の関係や距離感」なのだが、そこに答えなどなく、毎年のように、こどもも大人もお互いに悩み、葛藤し、終わると達成感がある。そういえば、いまこどもを取り巻く社会は、きれいな社会というか、おちついた社会というか、こどもがおこす「事件」のようなことは少なくなってきたなと感じる。少子社会の影響もあるが、こどもと大人も一緒になって試行錯誤するということ、大人の側も経験の機会が少なくなっている。

映画の途中で、一緒に観ていた息子が「なんで大人は子どもがいいことをやろうとしているのに協力しないのか」と訴えてきた。「こどもの声をちゃんとこころで聞いてほしいってことだよね」と息子に話しかけると「うん、そうだよ。」とのこと。こどももおとなも一緒に悩むこと、こどもの声を聴くこと、私がやらなくてはならないSDGsがそこにあると改めて考えさせられた。

ちばこども協働創造ネットワーク  田村光子

■キャスト:嶋田鉄太・瑠璃・味元耀大・蒼井優・風間俊介・滝内公美
■監督:呉美保
■脚本:高田亮
■音楽:田中拓人
■企画・プロデュース:菅野和佳奈・菅野和佳奈・佐藤幹也
■製作:murmur メ〜テレ トライサム 東映エージエンシー ワンダーラボラトリー 朝日放送テレビ フェローズ ディグ&フェローズ 九州朝日放送 LIP北信越
■公式サイト:https://www.kodomo-film.com
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